パニック障害の診断基準【医療機関に訪ねる基準も合わせて解説】

もくじ

パニック障害の診断基準

パニック障害を診断する際にいくつかの診断基準がありますが、ここでは国際的な精神疾患の診断基準であるアメリカ精神医学会が策定したDSM-5による診断基準を紹介します。

DSM-5の診断基準によると、パニック障害の症状は以下の通りです。

  • 繰り返される予期しないパニック発作がある。
  • 少なくとも1回のパニック発作の後に1ヶ月間以上、以下のうち1つ以上の状態が続いている
    ① さらなるパニック発作またはその結果について持続的な懸念または心配
    ② 発作に関連した行動の意味のある不適応的変化(パニック発作を避けるような行動)
  • その障害は、薬物または他の医学的疾患(例:心肺疾患など)によるものではない
  • その障害は、以下のような精神疾患ではうまく説明されない。
    社交不安症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、分離不安症

パニック発作とは

パニック発作とは突然、激しい恐怖または強烈な不快感の高まりが数分以内でピークに達し、その時間以内に、以下の症状のうち4つ以上が起こるものです。

  1. 動悸、心悸亢進、または心拍数の増加
  2. 発汗
  3. 身震い
  4. 息切れ感または息苦しさ
  5. 窒息感
  6. 胸痛または胸部不快感
  7. 嘔吐または腹部の不快感
  8. めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
  9. 冷感または熱感
  10. 異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
  11. 現実感消失(現実でない感じ)、または離人感(自分自身から離脱している)
  12. 抑制力を失うまたは”どうにかなってしまう”こと対する恐怖
  13. 死ぬことに対する恐怖

これらの基準に当てはまる場合は、専門の医療機関に相談し、適切な診断と治療を受けることが重要です。ただし、これらの基準はあくまで一般的なものであり、個々の症状や状況によっては異なる場合があります。

医療機関に訪ねる基準

医療機関に訪ねるかどうか迷っている場合、わかりやすい基準として以下のような状況が挙げられます。

  • パニック発作が日常生活や仕事、学業、人間関係に悪影響を与えている
  • パニック発作を避けるために、特定の場所や状況を避けるようになっている
  • 人前や外出することが怖くなり、自宅から出るのが困難になっている
  • パニック発作が起こることを恐れて、予防策を取りすぎてストレスが増えている

もし、パニック障害の症状があると感じたり、不安が抑えられない場合は、遠慮せずに医師や臨床心理士などの専門家の意見を求めましょう。パニック障害は珍しい疾患ではなく、ごく一般的な疾患です。適切な治療を受けることで、症状の改善や日常生活の質が向上することが期待できます。専門家はあなたの症状や悩みを理解し、最適な治療方法を提案してくれます。

パニック障害の診断に対してよくある疑問や質問

パニック障害の症状は個人差があるのでしょうか?また、全ての症状が現れる必要がありますか?

パニック障害の症状は個人差があります。全ての症状が現れる必要はありませんが、DSM-5の診断基準によれば、パニック発作の際には以下の症状のうち4つ以上が現れることが条件となっています。

しかし、患者さん一人ひとりの症状の出方や程度は異なるため、医師と相談しながら適切な診断を受けることが重要です。

パニック発作とパニック障害の違いは何ですか?

パニック発作は突然の激しい恐怖や不安感が数分以内にピークに達し、短時間で症状が収まる現象です。

一方、繰り返し予期しないパニック発作が起こることがパニック障害です。パニック障害では、発作の後も継続的な懸念や不安、適応障害などの症状が現れることがあります。

パニック障害はどのくらいで治るものなのでしょうか?

パニック障害は個人差があり、その治療期間も様々です。

適切な治療を受けることで、発作の回数や症状の程度が徐々に改善されます。医師との相談を通じて、症状に合わせた治療法を選択し、継続的に治療に取り組むことが重要です。

診断基準における「予期しないパニック発作」とは具体的にどのような状況を指しますか?

「予期しないパニック発作」は、明確な原因やトリガーがない状況で突然発生するパニック発作を指します。これは、今まで普段何気なく行っている日常の活動中や、特別な緊張や不安を感じていない状況下でも発症することがあります。

予期しないパニック発作は、予測や対処が難しく、患者にとって非常に不安を感じる症状です。パニック障害の診断基準では、このような予期しないパニック発作が繰り返し起こることが重要な要素とされています。

診断基準の中で、少なくとも1回の発作の後1ヶ月間以上続く症状が必要とされていますが、それはなぜですか?

この1ヶ月間以上続く症状の基準が設けられている理由は、一過性のストレスや緊張による一時的なパニック発作と、パニック障害による繰り返されるパニック発作を区別するためです。

パニック障害では、パニック発作が継続的に影響を与え、患者の日常生活や心理状態に悪影響を及ぼすことが特徴とされているため、この基準が設定されています。

診断基準における「パニック発作を避けるような行動」とは、どのような行動が考えられますか?

パニック発作を避けるような行動には、特定の場所や状況を避けること、発作が起こりそうな状況で安全策を立てること(救急車を呼ぶ人が近くにいる場所にいることなど)、またはパニック発作に対処できる薬を常に携帯することなどが考えられます。

パニック発作の症状のうち4つ以上が起こる場合は、どのような場合でもパニック発作と診断されるのでしょうか?

症状のうち4つ以上が起こる場合でも、他の原因によるものである可能性があるため、必ずしもパニック発作とは診断されません。他の疾患や状況を排除し、医師からの診断を受けることが重要です。

診断基準で挙げられた症状以外に、パニック障害患者が経験する可能性のある症状はありますか?

パニック障害患者は個人差があり、診断基準で挙げられた症状以外にも様々な症状を経験することがあります。例えば、過呼吸(息が深くて速い呼吸)、頭痛、筋肉の緊張、不眠、過眠(眠りすぎる)などが挙げられます。

症状は患者ごとに異なるため、医師と相談しながら症状や治療法について話し合うことが重要です。

診断基準に合致しない場合でも、パニック障害と類似した症状がある場合はどうすればいいですか?

診断基準に合致しない場合でも、パニック障害と類似した症状がある場合は、精神科や心療内科の医師に相談することがおすすめします。医師は患者の症状や状況を詳しく聞いた上で、適切な診断や治療法を提案してくれます。

パニック障害以外にも、類似した症状を引き起こす精神疾患やストレス関連の症状がありますので、専門家の意見を聞くことが大切です。自分だけで悩まず、適切なサポートを受けることで、症状の改善や適切なケアが可能になります。

パニック障害の治療に対応してくれる医師は何科でしょうか?

パニック障害の治療に対応する医師は、通常は心療内科・精神科医です。また、日本では、認知行動療法や心理療法などの資格を持つ医師や臨床心理士もパニック障害の治療に携わることがあります。

パニック障害の治療を選ぶ際には、医師の経験や専門性を確認し、信頼できる医療機関を選ぶことが大切です。

パニック障害と他の精神疾患(社交不安症、分離不安症、PTSDなど)の違いは何ですか?

これらの精神疾患は不安を感じることが共通点ですが、症状や原因が異なります。

パニック障害は、繰り返し予期しないパニック発作を特徴とする精神疾患です。一方、社交不安症は、他人との対人関係や人前でのパフォーマンスに対して過剰な不安や恐怖を感じる症状が主体です。PTSDは、過去のトラウマやストレスに関連する恐怖や不安、フラッシュバックなどの症状が特徴です。分離不安症は、親や家族から離れることに対する過剰な不安や恐怖が中心となります。

パニック障害の原因は何ですか?

パニック障害の原因は複数の要因が絡み合っていると考えられています。

↓こちらの記事で詳しく解説しております。

DSM-5の診断基準は、どのようにして策定されたのですか?

DMS-5はアメリカ精神医学会(APA)が策定した精神疾患の診断基準です。策定には、多くの精神科医や心理学者、研究者が関与し、研究成果や臨床経験をもとに、精神疾患の症状や特徴を分類・整理しています。

DSMは、随時改訂されることで、最新の研究成果や治療法に対応してしています。これにより、医療専門家が患者の症状を正確に評価し、適切な診断と治療を提供できるようになっています。

DSM-5の診断基準は、日本の医療機関でどの程度広く使われていますか?

DSM-5は、国際的に広く認知されている精神疾患の診断基準であり、日本の医療機関でも一般的に使われています。他にも、世界保健機関(WHO)が作成したICD-10も存在し、医療機関によってはこちらを使用している場合もあります。どちらの診断基準も、精神疾患の診断や治療に役立つ情報を提供しており、日本の医療機関で広く活用されています。

パニック発作が何度繰り返されたら、パニック障害と診断されるのですか?

DSM-5の診断基準では、パニック発作の回数そのものに特定の基準は設けられていません。ただし、繰り返される予期しないパニック発作があり、少なくとも1回の発作の後に1ヶ月以上続く症状(さらなるパニック発作に対する懸念や、発作に関連した行動の変化)がある場合に、パニック障害と診断されます。患者の症状や状況によって、診断に至るまでの発作の回数は異なります。

他の医学的疾患(例:心肺疾患など)によるものではないとの条件が診断基準にある理由は何ですか?

この条件が診断基準に設定されている理由は、パニック発作に似た症状を引き起こす他の医学的疾患とパニック障害を区別するためです。

例えば、心臓病や甲状腺機能亢進症などの疾患は、パニック発作と類似した症状(動悸、息切れ、胸痛など)を引き起こすことがあります。この条件を診断基準に含めることで、正確な診断が可能になり、適切な治療が行われるようになります。

DSM-5の診断基準に該当しない場合でも、パニック障害と診断されることはありますか?

DSM-5は重要な診断基準ではありますが、あくまでガイドラインであり、すべての症状が該当しなくても、医師がパニック障害と判断することはあります。患者の症状や状況によっては、診断基準に完全に該当しなくても、パニック障害の特徴的な症状が存在し、他の精神疾患や医学的疾患で説明できない場合、医師がパニック障害と診断することがあります。

パニック発作を予防する方法はありますか?

パニック発作を予防する方法はいくつか存在します。まず、ストレスを軽減することが重要です。リラックスできる趣味や運動、瞑想などを取り入れてストレスを緩和しましょう。また、睡眠を十分にとることや、規則正しい生活習慣を心がけることも効果的です。さらに、カフェインやアルコールの摂取を減らすことも、パニック発作の予防に役立ちます。

個人によって効果的な方法が異なるため、自分に合った予防策を見つけることが大切です。また、症状が出た場合にすぐに対処できるよう、呼吸法やリラクゼーション法を習得することも助けとなります。

さらに、適切なカウンセリングや認知行動療法を受けることで、パニック発作の引き金となる思考や行動パターンを改善し、発作の予防につながります。

最後に、パニック障害が疑われる場合や、症状が改善しない場合は、専門家に相談することが重要です。適切な治療やサポートを受けることで、パニック発作を予防し、日常生活の質を向上させることが可能です。医師やカウンセラーと相談しながら、自分に適した予防策や治療法を見つけましょう。

パニック発作が繰り返される周期は、個人差があるのでしょうか?

パニック発作が繰り返される周期は、個人差があります。ストレスや環境、個人の体調など様々な要因が影響しているため、周期は一定ではありません。

パニック障害と診断された場合、治療にはどのようなアプローチが取られますか?

パニック障害と診断された場合、治療には主に薬物療法、認知行動療法(CBT)、心理療法などのアプローチが取られます。これらの治療は、患者の症状や状況に応じて適切に組み合わせられ、効果的な治療プログラムが提供されます。

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この記事を書いた人

Relact編集長:大野(おおの)
大学では臨床心理学を専攻し、不安症について研究を行なう。

「Relact(リラクト)」はパニック障害や不安を抱える人々に対し、ITを活用したサポートを行うことを目的としたプロジェクトです。

私たちが目指すのは、正しい情報提供とサポートを通じて、全ての患者さんが自由で安心な日常を取り戻せるようになることです。

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