【自分でも出来る】パニック障害に効果的な認知行動療法

認知行動療法(CBT)は、私たちが持つネガティブな考えや感じ方を見直すための心のトレーニング法です。この記事では、CBTの基本概念、薬物療法との違い、主要な技法、効果、進め方について詳しく解説し、普段の生活でどう使えるのかをわかりやすく解説しています。

また、具体的なケーススタディを通じて、CBTが実際にどのように患者さんの不安や恐怖を軽減するのか、そして日常生活でのアプローチ方法も示しています。CBTは、たくさんの研究で治療効果が認められており、副作用の心配もないので、安心して取り入れることができます。

そして、日常の中で自分自身でできる小さなテクニックも紹介しているので、ぜひ参考にしてみて下さい。

もくじ

認知行動療法(CBT)とは?

認知行動療法(CBT)は、私たちの考え方や感じ方、行動について学ぶ治療法です。偏った考えが不安や怖さを生むことがあります。CBTは、そうした考えを見つけ出し、正しい方向に導く方法を教えてくれます。例えば、何かが怖いと思っていたことが、実はそうではないと気づく手助けをしてくれるのです。

CBTは偏った考え方を改めたり、過度な不安を受け入れるトレーニングを通じて、パニック障害の症状を軽減します。この方法は、たくさんの研究で効果が証明されており、不安を感じる時や怖さを乗り越えるのにとても役立ちます。

認知行動療法と薬物療法の違い、併用について

認知行動療法(CBT)は、今の考え方や感じ方に焦点を当てる心理的なアプローチによる治療法です。それに対して薬物療法は、薬を使って心の不調を和らげる方法です。CBTは、具体的な技術を学び、自分で困難を乗り越える力をつけるのを手助けしてくれます。

CBT単独での治療は、日常生活の中での思考や反応を変える手助けをしてくれます。一方、薬物療法は、不安や緊張を直接和らげる効果があります。この2つの治療法を併用すると、考え方の変容をサポートしつつ、症状の強さを和らげることができるため、より効果的にパニック障害の症状をコントロールすることができます。

このように薬物療法は、短期的な症状の軽減や発作の予防に役立ち、認知行動療法が効果を発揮するまでの「橋渡し」としての役割も果たします。薬物が症状の急な悪化を防ぐ一方、認知行動療法は長期的な改善や再発の予防をサポートします。

また、CBTは数ヶ月など継続的に行うことで治療効果が出るものです。そのため、短期的には薬物療法により症状を抑えることも治療の上では重要になります。このように、中長期的な視点で日常生活の質を向上するためにも、CBTと薬物療法を組み合わせることが最も効果的な治療だと言われれています。

薬物療法は効果的な治療の一つですが、その効果や副作用には個人差があります。そのため、自分の体調や感じる症状をしっかりと医師と共有し、最適な治療法を見つけていくことが大切です。また、認知行動療法のサポートのもと、薬物を適切に利用することで、より健やかな日常を取り戻す手助けとなるでしょう。

認知行動療法の主要な技法

認知行動療法(CBT)は、様々な手法を取り入れて患者さんの症状や問題に合わせて行われます。以下は、CBTの主な手法の一部です。

1. 認知再構成法

私たちが感じる不安や恐れは、しばしば自分の考え方や信じていることに起因します。認知再構成法は、その考え方を明らかにし、それが正確かどうかを検証し、より現実的な考え方に変える方法です。例えば、「電車に乗るのが怖い」という考えを、過去の経験や現実を基に「実は大丈夫だ」という考えに変えることができます。

2. 曝露療法(エクスポージャー法)

怖いと思うものや状況から逃げ続けることで、その恐怖は大きくなることがあります。曝露療法は、その恐怖に少しずつ直面し、それに慣れることを目的とした手法です。例えば、人前で話すのが怖いと感じる人が、少人数の前での話し合いから始め、徐々に大きなグループの前での発表へとステップアップしていく方法です。

曝露療法のポイントは徐々にステップアップを図ることです。急にハードルの高いことに挑戦すると、かえって怖さが定着する恐れがあります。そのため、曝露療法は心理カウンセラーや専門家のサポートの元で実施するようにして下さい。段階的に、安全で効果的な結果を得るためには重要です。

3. リラクゼーション法

ストレスや緊張を和らげ、心を落ち着かせる方法です。深呼吸や筋肉の緊張と緩和を交互に行うことで、心身のリラックスを促します。これにより、過度な不安や緊張が引き起こす体の反応を減少させることができます。

CBTの手法はこれらだけではありませんが、これらは特に一般的に使われるものの一部です。症状や問題に応じて、適切な手法が選択され、組み合わせて行われることも多いです。

認知行動療法の効果

認知行動療法(CBT)は、多くの研究結果に基づき、その効果が確認されている治療法です。CBTは薬物療法の効果と同等であるとの研究報告も数多くあります。イギリスのパニック障害治療のガイドラインでは、治療法の第1選択肢としてCBTが挙げられています。

CBTを継続的に行い、思考や反応のパターンを変える技術を学ぶことで、日常の不安や緊張を和らげることができます。特に、パニック発作の頻度や強さが減るという結果が多くの研究で報告されています。

実際の声として、CBTを受けたある方は「CBTのおかげで、以前よりも冷静に自分の感情や考え方に向き合えるようになった」と述べています。このように、CBTは心の健康を手助けする効果を持っています。

認知行動療法の治療期間

治療期間は個人差がありますが、一般的には3ヶ月から1年で効果が現れることが多いです。また、CBTの効果は長期的であり、治療が終了した後もその効果が持続することが報告されています。

認知行動療法の具体的なケーススタディ

ケース: 田中さん(仮名) – 電車が怖くなってしまった

田中さんは、突然のパニック発作の経験から、電車に乗ることが怖くなってしまいました。彼女は通勤時に電車を使わなければならないため、毎日の生活が困難となりました。そこで、心療内科医の勧めから薬物療法と認知行動療法の両方を取り入れた治療を行うことになりました。

CBTでのアプローチ

認知再構成法

治療に携わった心理カウンセラー(臨床心理士)は田中さんと一緒に、電車に乗ることに対する恐怖の原因となる思考を探りました。例えば、「電車内で気分が悪くなったらどうしよう」という不安な思考を、「前に乗ったときも大丈夫だったし、何かあれば降りればいい。出口の近くに立って、乗ってみよう」という現実的な考えに変える練習をしました。

曝露療法

電車に対する恐怖を克服するため、心理カウンセラーは田中さんへ徐々に電車との接触を増やすようアドバイスをしました。初めは電車のホームで電車を見るだけのステップから始めました。しばらくして、短い距離で、かつ、家族と一緒に電車に乗るステップへと進みました。その後、距離を徐々に伸ばすことで、1人でも電車に慣れるよう努めました。

この「少しずつ」のアプローチは、パニック発作を起こすこと無く、恐怖を乗り越える際のストレスを最小限に保つことを目的としています。

リラクゼーション法

田中さんは、電車に乗る前や乗っている間の緊張を解消するためのリラックス方法を学びました。特に、深呼吸や瞑想のテクニックを導入することで、不安を感じるたびに心を落ち着ける習慣を身につけました。また、リラックスする音楽やアプリを利用し、外部からの刺激を最小限に抑えることで集中を深める練習も加えました。

治療の結果

数ヶ月の治療の後、田中さんは1人で再び電車に乗れるようになり、通勤も問題なくこなすことができるようになりました。また不安になったときも薬に頼らずに、CBTによって得たスキルや経験によって1人で不安をやり過ごせるようになりました。


このケースは、CBTの手法がどのように組み合わされ、実際の問題に対してどう働きかけられるのかを示す一例です。CBTは個人の症状や状況に合わせてカスタマイズされ、最も効果的な方法でのアプローチが行われます。

認知行動療法の進め方

認知行動療法(CBT)のプロセスは、治療者(カウンセラーなど)と患者さんの間でコミュニケーションをしながら進めていきます。例えばCBTの中には「認知再構成法」という手法があります。これは、自分の考え方を見つめ直し、より健全な方向へ導く方法です。

具体的なステップとしては、まず自分が持っている怖いと思う考えを見つけます。例えば、「電車に乗るのが怖い」という不安が強いとします。次に、その考えが本当に事実に基づいているのか、カウンセラーと一緒に考えてみます。たとえば、過去に電車に何度も乗って問題なかった経験を思い出してみると、「実は大丈夫なのでは?」と気づくことがあります。このように、新しい考え方を試してみることで、徐々に心の中の不安を和らげることができるのです。

このように「認知再構成法」では、まず患者さんの頻繁に浮かぶネガティブな思考や感情を一緒に探ります。これが、不安やパニックのトリガーとなっている原因となります。次に、これらの思考や感情が実際の事実に基づいているのか、一緒に考え直してみます。

現実的な視点を持ってみることで、思考のバランスを取る方法を学びます。最後に、日常の中で新しい考え方を実践し、徐々に自然とポジティブな思考や感じ方が身につけられるようサポートします。

↓こちらの記事では具体的な認知行動療法の進め方を紹介しています。ぜひ合わせて読んでみて下さい。

家で出来る認知行動療法のテクニック

認知行動療法(CBT)は、治療者のもとでのセッションだけでなく、日常生活の中で自分自身をサポートするテクニックも豊富にあります。以下は、家で試すことができるCBTの基本的なテクニックの一部です。

これらのテクニックは、日常生活の中で簡単に取り入れることができ、自分の心の健康をサポートする助けとなります。最初は慣れないかもしれませんが、繰り返し練習・継続することで、効果を実感することができるでしょう。

1. 深呼吸法(リラクゼーション法)

深く、ゆっくりとした腹式呼吸を繰り返すことで、自分の心と体を落ち着かせます。特にパニックを感じたときや不安が高まっている時に、呼吸を意識することで緊張を和らげることができます。

深呼吸法を行う上でのポイントは「呼吸の温度や新鮮な空気が入ってくる感覚に意識を集中して、不安となる考えが浮かんできてもその考えを否定せずに、ただゆっくりと再び呼吸に集中を向けること」です。

2. 感覚の集中

特定の感覚(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)に焦点を当てて感じることで、現在の瞬間に集中する練習をします。例えば、手に持ったアイテムの質感や温度を感じる、周りの音に耳を傾けるなど、五感を活用して現在の瞬間に意識を向けることで、過度な不安から解放されることができます。

また、「不安の反対はリラックスではなく、何かに集中すること」と捉えることで、治療がうまく進む患者さんもいらっしゃいます。深呼吸だけではなく、本を読んだり、音楽を聴いたり、飴を舐めたり、ゲームをするなど自分にあった感覚への集中方法を見つけるのがポイントです。

3. 思考記録法

まず、不安に対する自分の考えや感じ方を記録することで、不安や恐怖を引き起こすトリガーや思考のパターンを明確にします。次にこの自動的に思い浮かぶ思考パターンに、「視野を広げた見方やバランスが取れた考え方があるのではないか?」と考えてみます。

例えば、「仕事でのミスが怖い。嫌われてしまう」という思考を捉えたとき、それに対して「みんな大なり小なりミスはするもの。ミスをしてもすぐに報告してリカバリーすれば大丈夫」などと再評価を繰り返すことで徐々にネガティブな自動思考パターンを和らげる方法です。

まとめ

認知行動療法(CBT)は、不安や恐れを引き起こす考え方を見直し、より現実的な視点へ導く治療法です。薬物療法と併用することで、思考の変容と症状の軽減が期待されます。

CBTは数々の技法を持ち、認知再構成法や曝露療法などがあり、患者の症状や問題に合わせて取り入れられます。多くの研究がCBTの効果を証明しており、日常生活での不安や緊張の軽減、特にパニック障害の症状の和らげる効果が報告されています。

このようにCBTは、心の不調を和らげるための一つの方法です。考え方を少しずつ変えることで、心が軽くなり、日常生活も前向きに過ごせるようになります。薬だけでなく、CBTのような方法で自分の心と向き合うことは、安心して日常を過ごす手助けともなります。

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この記事を書いた人

Relact編集長:大野(おおの)
大学では臨床心理学を専攻し、不安症について研究を行なう。

「Relact(リラクト)」はパニック障害や不安を抱える人々に対し、ITを活用したサポートを行うことを目的としたプロジェクトです。

私たちが目指すのは、正しい情報提供とサポートを通じて、全ての患者さんが自由で安心な日常を取り戻せるようになることです。

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